こんにちは。桂颯です。
今回は、
顔彩アートで用いる二つの描法、
没骨法と鉤勒法について
詳しく解説いたします。
はじめに:同じ「花」を描くのに、まったく違う二つの道

尊敬してやまない私の師匠、
白浪先生が没骨法で描いた薔薇の色紙

桂颯が鉤勒法で描いた鹿の子ゆりの色紙
季節の花を描くということー
それは、
私にとって
「自分と向き合う時間」と
言ってもいいかもしれません。
筆を取り、
花のかたちをとらえ、
色を重ねる。
その過程は、
外にある自然の美しさを
映すと同時に、
内なる自分自身の心を
映す時間でもあります。
花の絵を描くとき、
私が出会ってきたのが、
「没骨法(もっこつほう)」と
「鉤勒法(こうろくほう)」という、
二つの技法です。
一見どちらも
「花を描く」方法であることに
変わりはありませんが、
表現の方法も、
求められるものも、
まったく異なります。
そして描く人の心の在り方すら
変わってくるー
そんな奥深さが、
私を惹きつけてやみません。
今回は、
これらの二つの技法について、
私自身の経験を交えながら、
ご紹介したいと思います。
第1章:没骨法ー筆の技で描く、心の世界

白浪先生が没骨法で描かれた菖蒲の花
自由に描かれているようで、緊張感があり、均整がとれている。
私の大好きな作品です。
「没骨法」とは、
輪郭線を描かず、
筆だけで
直接モチーフの形と色を
表す技法です。
中国の古典画に起源を持ち、
日本でも
水墨画や墨彩画で
多く用いられています。
たとえば
花を描く場合、
筆に含ませた墨や顔彩を使い、
花びらや葉の形を
一筆で描いていくのです。
一見すると、
筆をさっと走らせるだけで
描いているように
見えるかもしれません。
ですが、実際には
非常に高い筆のコントロールと
感覚が求められます。
筆の角度、
力の入れ方、
スピード、
墨や絵の具の水加減ー
そのどれかが
ほんの少しでも違えば、
思うような形にはなりません。
私も何年も
没骨法を練習してきましたが、
いまだに「これだ」と
思える花が描けたことは、
ほとんどありません。
それでも、
この技法に惹かれ続けるのには
理由があります。
没骨法では、
描く人の気持ちや迷いまでもが、
全て筆に現れるからです。
自分の中にある
ざわめきや揺らぎが、
そのまま線やにじみに現れてしまう。
反対に、
心が鎮まり、
集中できた時には、
まるで筆が自分の手から離れ、
勝手に描いてくれるような感覚、
天が描かせてくれるかのような感覚です。
私の師匠は、
まさにその境地におられる方でした。
没骨法で描く抽象的な花々は、
見るものの心を静かにゆさぶる、
まるで禅画のようは世界。
毎回「一発勝負」とおっしゃっていて、
同じ絵は二度と描けないと
語られていたことが
印象に残っています。
私も、いつかそのように、
筆にすべてをまかせて
描けるようになりたいと、
今も少しづつ練習を続けています。
第2章:鉤勒法 ー 線と色でていねいに描く、確かな表現

桂颯が鉤勒法で描いた水仙の色紙
一方、私が現在
もっとも多く用いているのが、
「鉤勒法(こうろくほう)」
という技法です。
これは、
モチーフの輪郭線を先に描き、
あとから色を内側に
塗りこんでいく方法。
日本画では、
非常に伝統的で
基本となる描き方の一つです。
鉤勒法では、
形をしっかりと捉えることが
求められます。
下絵の段階で、何度も描き直し、
納得のいく線をとった上で、
細い筆で丁寧に輪郭線を描く。
そこに色を重ねていくことで、
安定感のある、
落ち着いた作品に
仕上がります。
この技法の良いところは、
描きてのコントロールが
効くことです。
一発勝負ではないからこそ、
じっくりとモチーフに向き合い、
何度でも手直しができる。
心に浮かんだ絵を、
自分のペースで
少しづつ
形にしていくことができます。
今の私にとっては、
この鉤勒法が
とてもあっています。
「こんな構図にしたい」
「こういう色合いにしたい」と、
思い描いたイメージを
ゆっくりと形にできる、
喜びがあります。
第3章:どちらも私の絵の道ーそして、顔彩アートへ

左の絵は、桂颯が鉤勒法で描いた葡萄図、
右の絵は、白浪先生が没骨法で描いた葡萄図
没骨法と鉤勒法。
一見対照的な技法に見えますが、
私にとっては
どちらも大切な描き方です。
没骨法は、自由で即興的。
筆一本で、
いまこの瞬間の自分を
映し出すような描き方。
まさに
「描くことが修行であり、
瞑想でもある」ような世界です。
鉤勒法は、計画的で丁寧
理想の形に向かって、
少しづつ色を重ね、
自分の思いを
少しずつ重ねていく。
「作品を組み立てていく」ような
喜びがあります。
どちらにも魅力があり、
どちらも奥が深い技法です。
その両方を経験したきたからこそ、
私は今「顔彩アート」という、
自分なりの新しい表現に
たどり着きました。
顔彩アートは、
鉤勒法で
計画的に描くこともできますし、
没骨法で
即興的な筆の動きを
楽しむこともできます。
どちらの良さも取り入れながら、
もっと自由に、
もっと軽やかに
和の美しさを描くことができるー
それが、
私が今、教室でお伝えしている
「さわやか顔彩アート」の魅力です。
おわりに:どんな描き方でも、自分らしさを探す旅

桂颯が鉤勒法で描いた色紙「月夜の椿」
絵を描くことに、
決まった正解はありません。
大切なのは
「自分が今、どんな気持ちで、
何を描きたいのか」
それに気づき、
表現するために、
さまざまな技法があるのだと思います。
没骨法で、
内面の想いを一気に
筆に託すもよし。
鉤勒法で、
色彩と線を丁寧に
積み重ねるもよし。
そして
そのどちらも活かして、
自分だけでの新しい表現を
見つけるのも、
また一つの絵の道です。
これからも、
私自身、技法を深めながら、
表現の幅を広げていきたいと
思っています。
そして、
教室やこのブログを通じて、
そんな楽しさを
皆さんと分かち合えたら
嬉しいです。

