私のスズメは、宇宙人だった|絵が上達するために大切だったこと

こんにちは。桂颯です。

今でこそ、
顔彩で季節の花や生きものを
描いていますが、
初めから上手に
描けたわけではありません。

私の絵は、
そんなところから始まりました。

目次

私の絵手紙は「不在票」から始まった

私が初めて絵手紙を描こう
と思ったのは、
民生委員をしていた頃です。

毎月、
地域で一人暮らしをされている
お年寄りのお宅を訪ね、
お話し相手になりながら、
お変わりがないかを
確認する活動をしていました。

けれど、
訪問した日にご不在のこともあります。

そんなときは、
「本日、ご訪問させていただきましたが、
ご不在でした。お変わりありませんか」
と書いたメモを、
郵便受けに入れていました。

でも、それだけでは、
宅配便の不在票のようで、
どうにも味気ありません。

その方のお庭に咲いている花を
写真に撮り、
家に帰ってから絵にして、
短い言葉を添える。

それを、あらためて
郵便受けに入れておきました。

我ながら、
なかなかよいことを
思いついたと思っていました。

ところが、
次に伺ったとき、
その方から尋ねられました。
「あれは、何の花?」

……何の花か、
伝わっていなかったようです。

描いた本人には、
その花にしか
見えなかったのですけれど。

せめて、何の花か伝わるように

私は少しがっかりしました。

そして、どうせ描くなら、
せめて何の花かは
伝わるようになりたいと思い、
先生について
墨彩画を習い始めました。

とはいえ、
習い始めたからといって、
すぐに上手になるわけではありません。

筆の持ち方も、水分の加減も、
何もかもが不慣れです。

思うように描けない日が続きました。

ある年、
頑張って描いた福寿草を
年賀状にして、
親戚へ送りました。

返ってきた言葉は、
「元気がいい年賀状だね」
でした。

福寿草が元気だったのでしょうか。
それとも、
私の筆づかいが
元気すぎたのでしょうか。

褒められたのか、
笑われたのか、
今もよくわかりません。

私のスズメは、宇宙人だった

さらに、あるとき、
娘にスズメの絵を描いて送りました。

すると、
娘から返ってきた言葉は、
「宇宙人?」
でした。

こうして、私のスズメは
宇宙人になりました。

私を励ましてくれた『徒然草』

そんな私を励ましてくれたのが、
『徒然草』第百五十段の一節でした。

そこには、
芸を身につけようとする人が、
「下手なうちは人に
知られないように練習し、
上手になってから人前に出よう」
と考えているようでは、
上達しないと書かれています。

未熟なうちから
上手な人の中に交じり、
笑われても恥じずに続ける人は、
生まれつき才能がなくても、
やがて上達していく——。

この一節を読んだとき、
少し肩の力が抜けました。

下手な絵を人に見せることは、
恥ずかしいことではない。

それも上達するための、
大切な一歩なのだと
思えるようになりました。

上手になってから見せたのではありません

Screenshot

今振り返ると、
私は、上手になってから
絵を人に見せたのではありません。

上手ではないまま、
ずいぶん大胆に、
あちらこちらへ送っていました。

そして、
「何の花?」
「元気がいいね」
「宇宙人?」
と言われながら、
少しずつ描けるように
なっていったのです。

人に絵を見せるのは、
少し勇気がいります。

けれど、
見てもらうことで会話が生まれます。

思いがけない一言にがっかりしたり、
一緒に笑ったりしながら、
「次はもう少し」と、
また筆を持つことができます。

私の絵を育ててくれたのは、
先生のご指導だけでなく、
そんな遠慮のない
言葉の数々だったのかもしれません。

私は、
上手になってから絵を見せたのではなく、
見せたから少しずつ上手になりました。

たとえ、
スズメが宇宙人に見えたとしても。
その一枚はきっと、
次の一枚へつながっています。

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この記事を書いた人

さわやか墨彩画教室の桂颯です。

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