こんにちは。桂颯です。
これまで私は、
水墨画や墨彩画で
さまざまな龍を描いてきました。
その中でも、
特に心惹かれるのは白龍です。
なぜ、
私は白龍を描き続けているのかーー
そして、
どうして龍を描きたいという
強い衝動に駆られるのかー
今回は、
そんな私の想いを、
これまでの作品とともに
お話ししたいと思います。
第1章:龍を描くようになったきっかけ

龍という存在に強く惹かれ、
描きはじめたのは、
ある夢がきっかけでした。
それは、
箱根の飛龍の滝を
訪れた日の夜のことです。
私は、
とても不思議な夢を見たのです。
滝壺に住む山椒魚が、
禁断の恋をしました。
けれど、その恋は
周りの山椒魚たちに受け入れられず、
ついに二匹は襲われてしまい、
命を落としてしまいます。
そんな二匹を哀れと思った神様が、
彼らをひとつにし、
美しい白龍へと
生まれ変わらせました。
白龍は、
まるで天へ導かれるように、
静かに空へと昇っていきます。
白く輝くその美しい姿は、
夢の中とは思えないほど鮮明で、
目が覚めたあとも、
ずっと心に残っていました。
「あの白龍を描いてみたい」
その想いが、
私の胸の奥に強く刻まれました。
第2章:龍を描きたい!

どうしても龍を描いてみたくて、
初めて「龍を描きたいんです!」と
水墨画の先生に言ったとき、
「女性のあんたがねえ。へえー。珍しいねえ」と
面白そうに言われました。
しかも、
「白龍を描きたいんです!」というと、
先生は、
「白い龍を描く人はあまりいないよ。難しいから」と
苦笑されました。
「私は、美しい白い龍が描きたいんです!」
どうしても描きたかった私は、
無理やり頼んで、
とにかく龍の描き方の
ご指導を受けました。
先生は、
お寺の天井や襖絵などに、
たくさんの龍を描いてこられた
プロの水墨画家ですから、
私は、最高の指導者に恵まれたのでした。
第3章:天龍寺の雲龍図を模写して

ある程度、龍の描き方を学んだ後、
次に、模写をするために、
さまざまな龍の絵をネットで探しました。
一番、心惹かれたのは、
天龍寺の天井に描かれた
巨大な雲龍図でした。
日本画家「加山又造画伯」によって、
描かれた「雲龍図」です。
早速、1週間ほどかけて、
その雲龍図を模写しました。
描き上げた雲龍図は、
先生が手直しをしてくださいました。
私は、
自分で描いたこの龍を
とても気に入って、
額に入れて、
今でも家に飾っています。
額の中にいる龍は、
いつも力強い目で、
わたしを見つめています。
加山又造は、
凄い画家だと思います。
模写しながら、
加山氏の気迫に
圧倒されていました。
模写といっても、
パソコンの画像データを
見ながらの模写です。
それでも、
画家の気迫は、
いつまでも絵に残っていて
迫ってくるのです。
模写した私の絵を通しても
気迫は伝わってくる気がします。
龍が絵の中で、
生きているのです。
みなさんも、ぜひ、
京都天龍寺の天井に描かれた
実物の「雲龍図」を見に行ってください。
きっと、強い力を感じるはずです!
第3章:私の求める「白龍」とは?

私の中での「白龍」には、
明確なイメージがあります。
真っ白に輝き、
人々を幸せに導く
厳しくも、
品格のある美しい龍神なのです。
人の心の奥の奥まで、
見通す厳しい目を持ち、
「それでいいのか?
本当にそれでいいのか?」と
まっすぐに問いかけてきて、
心の中の弱さや覚悟の甘さを
容赦なく、厳しく追求しながら、
正しく導いてくれる存在なのです。
その目は、
東大寺戒壇堂にある
広目天の目のように、
内面に染み込んでくる目なのです。
第4章:私の雲龍図

この作品は、気に入っていただけて、
数社の会社にしばらく貸出をいたしました。
龍を描くたびに、
その奥深さを実感します。
何度も何度も筆を重ねるほどに、
自分らしい龍を描くことの
難しさに気づかされてきました。
厳しさや強さを宿し、
内面を見つめるような
力強い眼差しを表現したくて——、
赤い瞳にしてみたり、
金を差し込んでみたり、
さまざまな工夫を凝らしました。
けれど、
思い描くような「龍の目」には
なかなかたどり着けません。
いったい、
どうすれば「龍の眼差し」を
描けるのだろう?
その答えを探すため、
過去の名作を何度も見返しました。
円山応挙、雪舟、狩野永徳、
狩野探幽、横山大観——
どれも圧倒的で、
素晴らしい作品ばかり。
けれど、
画集やネットで見る画像では、
実物の迫力を感じることはできません。
細部をもっとじっくりと、
この目で確かめたい。
そう思い、
お寺の天井に描かれた雲龍図や、
美術館を訪れ、屏風絵に描かれた龍など
あちこち見てまわりました。
実物の龍の絵を見るたびに、
圧倒され、胸が熱くなります。
わたしは、
これからもずっと、
理想の白龍を探し求めることでしょう、
第5章:墨彩画による白龍

上の作品は、気に入ってくださった方の
お宅に飾られています。
白龍の白を際立たせるために、
墨彩画での表現を試みました。
胡粉を使うことができるからです。
墨彩画であれば、
龍の白は、
薄い胡粉を何層も重ねて、
細やかに、表現することができます。

ただし、
墨彩画の「白龍」は、
美しく仕上げることはできるけれでも、
水墨画に比べて、
迫力が弱まる気がします。
まとめ
私は、
迷ったり、心が揺らいだり、
弱ったりするときに、
無性に龍を描きたくなります。
そういうときに、
龍の鋭い眼差しに見つめられたい、
心を引き締めたいと
思うのです。
「もっと強くなれ! 甘えるな!」と
叱咤激励される気がします。
龍は、
私にとって、
ただのモチーフではなく、
心を整え、前を向くための
存在なのかもしれません。
だから、
わたしは、
これからも白龍を
描き続けようと思っています。